■近畿弥生の会

■弥生文化博物館との2009共催イベント報告

第2回 農耕を営むための道具−木器・石器・金属器− 寺前直人さん

 6月からはじまった大阪府立弥生文化博物館と近畿弥生の会の共同企画「oneness 弥生時代入門講座『聞いてなっとく 弥生の世界』」。第2回目となった8月8日(土)は、道具の世界から弥生時代研究にアプローチする寺前氏が担当。特に木器を中心にから弥生文化を解説しようと言う内容であった。
 冒頭から、会場の演壇前にセッティングされた机に並べられた10数点の鋤や鍬、斧の柄などの木器、数種類の石斧に目が奪われ、「何かが始まるぞ・・・!?」という・・今回も期待感にわくわくする始まりとなった。
これらの資料は弥生文化博物館所蔵(一部寺前氏の研究室から持参された資料も含む)の実物や復元資料であり、普段はガラスケース越しに見ることが多い資料で、直接手にする機会はめったにないものであった。それを今回は、手に取って観察しながらの講座となった。
 もちろん、受講した皆さんは、資料保護のための手袋をはいての観察でしたが、めいめいに手に取って、どれも同じように見える斧を並べて比較したり、一点の石器をじっと手に持って考え込んだり・・、寺前氏から渡された道具の質問シートに自分が思う道具の使い方や名前を考えて記入していました。
 しばらくの観察の後、寺前氏による答え合わせになりましたが、その内容は道具の名前(名称)をおぼえるというより、使い方(機能)を中心にしたもので、弥生時代の道具の文化の広がりを知るものとなった。
 今回の講座は観察に多くの時間を使って、「実物に触れ、観察しながら、弥生時代研究の各分野を解説する」という講座の趣旨と弥生文化博物館ならではの特色を十分に活かすものとなったのではないかと思う。また、スタッフ(私)にとっては実際のモノ(遺物)が語る情報の重みと量について改めて再発見した講座となったのでした。
 リレートークによるこの講座は、毎回担当講師による工夫が凝らされていて、次回はどのような展開があるか、スタッフながら楽しみの講座です。(文:近畿弥生の会Yam)


第1回 土器から見る弥生時代のはじまり  豆谷和之さん

 大阪府立弥生文化博物館と近畿弥生の会の共同企画「oneness 弥生時代入門講座『聞いてなっとく 弥生の世界』」が始まった。
 この講座は実物に触れ観察しながら、弥生時代研究の各分野を解説するという連続企画。 まず、トップバッターは土器研究から弥生時代のはじまりを研究し続ける豆谷氏。受付で配布された、資料と・・ナイロン袋。もう、受付の時点から「おや・・!?」が始まっていた。   ナイロン袋には紙縒りとトイレットペーパー2切れと粘土。この紙縒り、実は佐原先生直伝の豆谷氏が作成した、この道25年の縄文(「縄紋」と表現すべきか・・)原体であった。 受講生は、「えっ?弥生入門講座で縄文・・?!」と思うまもなく、トイレットペーパーによる縄文原体つくりに挑戦させられる。これがなかなか・・実にうまくできない。私は3本つくって、やっと何とか納得できそうなものが出来た。この間、会場はシンとなって、集った70数名の老若男女は、必死に紙縒りつくりに励んでいた。もう、講師のトークはそっちのけだったかもしれない。
 頃合いをみて、「できないでしょう・・?」「じゃあ、私の特製原体で粘土に模様をつけてみましょう。」この講師の言葉に反発と畏敬を覚えつつ、どんどん引き込まれ、自分でコロコロと右向き・左向きと縄文を付けて行くこととなる・・・・・。
 このように今回の講座は、聞くだけでなく受講者も自ら参加しつつ、前半は縄文原体を通して土器の表面に施される施文と調整の基礎、後半は大阪府下で出土した凸帯文土器と前期弥生土器の実物破片を観察しながら、基本的な図面の見方や調べ方、専門用語、さらには土器研究の最前線のソースを学んだのである。会場からは、「難しい話かと思ったら、自分も体験しながらで楽しく身に付きました。」との声もあった。
 今回の講座は、まさにサプライズ「驚き」あり、ハピネス「知る喜び」ありの、考古学がはじめての方にとっても、少し学んだ方やわれわれプロにも充分楽しめる内容になっていたと思う。
 ただ、残念だったことは、豆谷氏が夫婦の危機を乗り越えつつ、夜なべしながら用意したという縄文原体紙縒りグッズが全員に行き渡らなかったことと、後半の土器の実物観察と深まり学習にあまり時間が取れなかったことであろうか。まあ、これも前評判や講師目当ての根強いファンが存在していることの発覚も含めた、予想に反した当日の参加者の多さによる嬉しいサプライズの結果であったと思う。リレートークによる今後の展開が楽しみである。
 なお、当日は大学で学ぶ若い学生たちの姿があまりみられなかったが、これから学ぼうという方にも充分応えることができる内容であり、更なる参加を呼び掛けたいと思う。 (記:近畿弥生の会・Yam

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